第1回【ACTUS 広島店 橋口博史】いまは本当に好きなものだけに、 愛情を注ぎたい

ACTUS 広島店
橋口博史さんの 第1話

インテリアにこだわる、というと少しハードルが高く感じてしまうかもしれませんが、自分にとって心地よい場所をつくると言い換えたらどうでしょう?

インテリアを楽しむ人の部屋づくりエピソードから、そんな部屋づくりのヒントを探る「みんなのインテリアストーリー」。初回にご登場いただくのは、ACTUS 広島店に勤める橋口博史さんです。たくさんの “好き” と “憧れ” からはじまったインテリアとの関係を経て、いまこだわっていることとは?

憧れを掘り下げていった先にインテリアがあった

西海岸風のインテリアにハワイアン、さらにはモダンインテリアやいま人気の北欧インテリアまで。橋口さんはこれまでさまざまなテイストのインテリアを楽しんできたそう。海外カルチャーがお手本だった、1980年代に青春を過ごした世代。もれなく橋口さんも海外のファッションやライフスタイルに憧れを抱き、虜になった1人でした。


「中学生くらいからでしょうか。音楽が好きで、それをきっかけに憧れのミュージシャンたちのバックボーンにも興味を持つようになりました。彼らのファッションや暮らし、カルチャーを先輩に聞いたり、本で調べたりして、どんどん掘り下げていった覚えがあります。いま思うとそれがインテリアというか、ライフスタイル全般にこだわりはじめた原点だったように思います」

特に20代は、雑誌全盛の頃。『POPEYE』や『Hot-Dog PRESS』を穴が空くほど読み込み、風通しの悪い畳敷きの自室を爽やかなカリフォルニア風に仕立てようと必死になったこともありました。

そしてもうひとつ憧れたのは、映画の中のインテリア。ウッディ・アレン監督の「アニー・ホール」のNYスタイルや、ダスティン・ホフマン主演の「クレイマー、クレイマー」に出てくるリビングのインテリア……。


橋口さんの口からはかつて憧れを抱き、部屋づくりの参考にしたキーワードが尽きることなく溢れてきます。知れば知るほど奥深く、おもしろい。インテリア販売の仕事に就いてからは、「使わないとわからないし、お客さまに伝えられない」というスタンスで、自らさまざまなアイテムを購入。自室のインテリアに取り入れながら、各国の製品や文化への知識を広げていったといいます。

「持ちたい」から、持つものを絞り込む

お話をうかがった日、インテリアストーリーを語る橋口さんの手元には、ある雑誌がありました。20年前の『Esquire』のインテリア特集号。
「当時これを読んですごくワクワクして、インテリアっておもしろい世界だなと改めてインテリアを意識するきっかけになった雑誌です」
インテリア関係の仕事に就く前の出合い。いまでも折に触れて見返すというその雑誌をめくりながら「でもいまは……」と、自身のストーリーを続けます。そう、さまざまなスタイルを経て、たどり着いた現在の部屋の話へ。


「いまはどちらかというと古いデザインのものに惹かれている気がします。たとえばこの雑誌に載っているようなもの。古いもののほうが味があって、きちんとデザインされている印象を受けるものが多いように思うんです。とはいえこれから新しく何かを購入しようとは考えていません。むしろいまは自分にとって心地よくないものを整理していっている段階。これからの自分には、本当に必要なものが、愛情を注ぎきれる分だけ、あればいいかなと感じています」


これまで買い集めた“好き”や“憧れ”が詰まった家具の中から、さらに厳選したものだけを残した部屋づくりへのシフト。究極をいえば「本当に好きなものをたったひとつだけ部屋に置くような」贅沢な空間へ。たとえばそのたったひとつが絵画であっても、それはインテリアだと語ります。


橋口さんがいま目指しているのは、いわゆるミニマムな暮らしや、持たない暮らしとは少し意味合いが異なるよう。インテリアを愛するがゆえの、絞り込み。「どちらかというと、持ちたいんですよね。これだけは持ちたい、持っていたいという気持ち」どう表現したらいいかわからないと言いながらも、部屋に残すインテリアについて語る橋口さん。その口調には、言葉にしきれない家具に対する愛情と優しさがこもっていました。

次回は、橋口さんの偏愛インテリアを語っていただきます。


橋口博史(はしぐち・ひろし)さん

ホテルや飲食関係の仕事を経て、インテリア販売の仕事に従事。現在、ACUTAS 広島店に勤務。
木工関係の仕事をしていた父の影響で、子どもの頃から木やものづくりが身近な環境に。
小学生の頃はギターを自作したことも。