やまがたさんの暮らしのあしあと Vol.9

第10回を目前に控えた9回目。

インテリアに近いコラムがいまいち書けておらず、名だたる他の筆者のコラムを読むと、ここぞとしっかりインテリアが書かれているので「はて、これでいいものだろうか?」と相変わらず悩みながら筆という名のタイピングをしています。

はて、これでいいものだろうか?

という素朴な疑問について、今日は長々と分解してみたいと思っています。

この小さいけど、急に広い野原に投げ出されたような不安を感じる
「はて、これでいいものだろうか?」という疑問。

まずは私のよくあるシチュエーションで想像してみたいと思います。

会社での出来事。

約30人近いメンバーが一同に揃い、3ヶ月に1回の研修という名の人間関係の構築の時間を取ることがあります。そこで、私は「今のみんなの状態をより良くするために、何をすればいいか考えてほしい!」と数名の精鋭に運営チームをお願いしました。

ありますよね?
「より良くするために、何か考えてほしい」という漠然とした依頼。

私が部下だったら「いやいや、もうちょっとちゃんと、何をどう良くしたいか指定してよ。」なんて突っ込みたくなりますが、上司の身にもなったことがあるので、「何が課題で、どう良くすればいいか」までを察知&思考して欲しい。という重めの期待がくっついているわけで。

さて、みんなの様子をみていると、こんな会話が聞こえてきます。

Aちゃん「今って、たぶん信頼関係が足りないんだと思う!」

Bちゃん「とはいえ、普段から一緒に仕事してない相手と信頼関係ってどうやって構築する?」

Cくん 「信じあえないと、うまく行かないレクレーションとかはどう?」

Dくん 「つまり、連携しないとできない事するってのは良さそう。」

Cくん 「そうそう!連携の中で、自然と相手への感謝とか、もっとこうしてみたら?っていうリクエストが生まれるといいよね!」

Dくん 「チームワークってやつか。」

Aちゃん「いいね!例えば、脱出ゲームとか!?」

Bちゃん「脱出ゲームは分かりやすそう!チーム分けどうする?」

Aちゃん「頭脳派と体力派に分けて、それをミックスする!?」

Dくん 「いいね!それをミックスさせてチームが均等になるようにしよう!」

その後、4人で〇〇さんは運動ができるから、〇〇さんはクイズが得意たから!と盛り上げながらチーム分けをしていました。

その最中で、ふと
Cくん 「あれ?これで本当にいいんだっけ?この研修の目的って果たせてる?」と、何かに気付きました。

そうなんです!

彼らは一生懸命考えながら、だんだんとアイディアが楽しくなっていき、最初の目的が真に叶うための選択からズレていることに気づいたんです。

私は(私の所属している会社では)この、最初の目的のことを「本質」なんて呼んだりもします。

今回のシチュエーションだと、「今のみんなの状態をより良くする」のが目的で、「脱出ゲームで脱出できること」でも「みんなが盛り上がること」も本当の目的ではないんです。

じゃあ、なにが「今のみんなの状態をより良くする」為の本質的な手段だったか?でいうと、

①信頼関係を築くこと

②お互いが連携して達成できる共通体験を生むこと

③自然と相手への感謝とか、もっとこうしてみたら?っていうリクエストが生まれる状態

この3点がポイントだったと思います。

運営チームは、①②③までたどり着いたものの、具体的なアイディアの話になるとついつい本質からずれていってしまったんです。

C くんが立ち止まることで、この3つが一番叶う状態を作ることに戻ったみんなは、結果的に「チーム対抗バレーボール」の実施に舵を切りました。

・3回のタッチで相手チームにボールを返す強制的な連携

・味方を信じてパスを出す必要性

・GOOD PLAYに対する称賛や、ミスカバーへの感謝の気持ちが言葉になりやすい

・負けたことによる悔しさから、次の試合に向けた前向きなフィードバックが生まれる

彼らが①②③を大切にして選んだ結果、いい時間が設計されていました。

はて、これでいいものだろうか?

この、ふと降りてくる疑問は、けっこう魔法めいた効果があると思います。

第六感のようなものが、じぶんの進んでいる方向に待った!をかけてくれているわけです。

立ち止まり・振り返り、最初に進むと決めていたルートと現在地を比べてみる。

決して、ズレていることが悪いわけではなく、じぶんの意図や想いから外れていないかな?

今のベストのルートかな?/表現かな? というのを確かめる瞬間ですね。 
これって、人間にしかそなわってなさそうですよね。

このコラムでも、同じことが言えそうです。

「やまがたさんの暮らしのあしあと」とタイトルがある、このコラム。

かなり自由に書きたくっていて、果たして、最初に想像した内容で筋が通っているのかしら?と

足を止めてみたのですが。。。。

結果、私の心のなかのCくんは
「これはこれで、ありか!」と甘やかしたような想いで許可が降りました。

やまがたさんの暮らしのあしあと。

暮らしと書いていますが、きっとわたしの暮らしの中には、「生きる」とか「考える」とか「働く」とか、目に見えないものが多く存在しているようです。

次回が、10回目。

記念の10回目は、

「ライフスタイル」について、ちょっと書いてみようかとおもいます。

また、お会いしましょう!                                 

おしまい


やまがたゆか

テキスタイルデザイナーを経て、絨毯・ラグの企画営業デザインを担い、今は空間デザインをメインにした、アートディレクターをしています。  職場ではデザイナーのマネージメントもしごとの一つ。  物書きの名前は「やまがたゆか」で連載を開始。   プライベートはゆるゆると愛犬とごくごく普通の旦那と暮らしています。  銀色夏生さんの本が好き。