こんにちわ。やまがたゆかです。
このコラムでは、あまり「今の時代」のこととか、ブームのような話より、変わらずありつづける何か。を捉えて話しをしていきたいと思っています。
と、言うのも。
早速「今の時代」の話になってしまうのですが、『コロナ渦』っていう言葉があまり好きになれないんですね。
好きなひとなんていないと思いますが(笑)
コロナによって見えたもの。
コロナだから気付けたこと。は最近よく耳にしたり、目にすることが多いです。
特に、オンラインに関わるビジネスチャンスなんかの業界では、3年先の未来がコロナによって、今来た。なんて言われたりしています。
オンライン〇〇が、主流になったり、テレ〇〇が、当たり前になる時代が目の前にきているわけです。
何を隠そう、私の所属している会社も、9割テレワークになり、もっぱら会議と言われるものは、ZOOMを利用しています。
プライバシーのへったくれもないので、惜しげもなく家の中を公開しています。
便利になったなーと思いはありますが電車に揺られていた通勤時間はなんだっただろう?と不思議におもうこともあり。
なんだか、強制的に未来に飛ばされているような気持ちにもなってもうちょっとゆっくり成長したかったような気もするんだけどな。。。
なんて考えたりしています。
もうちょっと、ゆっくり成したい。
この言葉が今回のテーマです。
成す=成長や成功するのに、「ゆっくり」って、すごい後ろ向きに聞こえるかもしれませんがけっこう大事だと私は思っています。
私のとても好きな本の一コマでこんなシーンがあります。
ー 本屋にいる親子。
子供は5歳くらいの男の子。
お母さんは次の予定があるのか、せかせかした様子。
そんな事は気にせず、買ってもらえる1冊を必死に探して、比べて、悩む男の子。
そこでお母さんが一言。
「どれでも良いから、早く選んで。ママ急いでるから。」と。
そこで、本屋の店員をしている主人公は、こう呟くんです。
『本くらい、ゆっくり選ばせてあげたらいいのに。・・・・・』
この後に、もうひとこと続くんです。
みなさん、なんて続くと思います?
答えは、こう。
『大人になるのは、思っている以上に早いんだから。』
そんなニュアスのことばが続きます。
これを読んだ時に、「本当に、そうだな。」と感じました。
あっという間に大人になっていて、試行錯誤したり、迷ったり、悩んだり。
そういう瞬間にも、音も立てずに小さく成長している瞬間があったはず。
気付いたら、「早い」ことが「良いこと」の世界観で生きていた気がします。
ダメではないけど、はやくなくても、いいんじゃないかな。と思ったりもしたんです。
どうでも良いように思えることに悩めるくらいの余裕があったり、今日の晩ご飯何食べようかな、ってことを、億劫に思うのは時間がないからでは?
と考えました。
(が、これは嘘でした。サザエさんの一コマでも、専業主婦でゆったり過ごすサザエさんは献立に頭を抱えているシーンがありました。主婦はいつの時代も大変です。)
いつから、こんなに早さが正義になったんだろう?
調べてみましたが、あんまり正確なこたえはなく。
ゆっくり、成す。
これを感じたもう1つのエピソードが、“金継ぎ”。
5月下旬に、とあるガラスブランドの「新作コンペ」に友人と共に参加しました。
テーマは「冷茶に合うグラス」というテーマでした。
友人とあらゆる角度から考えたときに、冷茶に温度ではなく、時間を感じさせることは出来ないかなあ。という発想に至りました。
そこで、壊れたモノを直す。時間を巻き戻す=“金継ぎ”の技術を調べたんです。
時を戻しながらも、新しい時をまた刻む、金継ぎ。
時間を継ぐような美しい作業には、どんな工程があるんだろう?と見てみると、想像を超えた手間隙がかかっていたわけです。
たくさんの工程の中には、多くの“待ち時間”があります。
丁寧に磨き、
天然の糊を付け、
乾くのに1週間かかったり、
さらに糊を削り、
漆を塗って、また乾かして、
金粉を振りかけるまでに
相当な時間を費やします。
それらを経てかかる期間は、長いと1ヶ月以上。
今ならボンドもある時代に、金継ぎはまだ伝統技法として生きています。
あっという間 が急に、チープに思えてきますね。
ゆっくり、成す。
というこの美徳感は、手間隙という概念ではないんです。
金継ぎは、「手間隙」というより、「できるのを待つ」という長さなんです。
待てる。 それがきっと、私の心にグッと来たのだと思います。
最初の本屋の親子のエピソードに戻ると、待てないのは、お母さん。
待つことで、得られるなにかを、信じてみてほしいというのも、もしかしたら主人公の想いだったのかもしれないです。
今じゃなきゃ、この速さでないとダメ!ってことはビジネス以外においてどのくらいあるんでしょうか。
〇〇どき。って言葉も、個人的には好きなことばなんですが、〇〇どき。
を決めるのは、自分であらせて欲しいです。
だれかに迷惑をかけるスピードで生きたいわけではないけれど、だれかのスピードで生きる自分も、あまり好きにはなれそうにない。
そんなことを考える最近のエピソードでした。
おしまい
やまがたゆか
テキスタイルデザイナーを経て、絨毯・ラグの企画営業デザインを担い、今は空間デザインをメインにした、アートディレクターをしています。 職場ではデザイナーのマネージメントもしごとの一つ。 物書きの名前は「やまがたゆか」で連載を開始。 プライベートはゆるゆると愛犬とごくごく普通の旦那と暮らしています。 銀色夏生さんの本が好き。