『愛しのザーボル』

こんにちは!平井です。
今回はバルーチのラグの中でも私がいつも好きだなぁと思うザーボル周辺で作られたと思われるラグについてその魅力をお話します。

ザーボルとはイラン南東部の スィスターン・バルーチェスターン州にある町の名前です。
このザーボル周辺にはバルーチの人々が暮らしていて、ラグが織られています。

イランの地図でお隣のアフガニスタン側にボコッと出っ張っているところにあるので場所がすぐ覚えられますね!

ザボールか、ザーボルか

まずここから解決していきましょう。
どちらでもいいといえばそうなのですが、どこで伸ばすか問題は個人的にはとても気になります。
気になるのですっきりしておこうと思います。
英語表記だとzabolと書かれることが多いからか、どこで伸ばすのかわからなくなっちゃったんですね。
そういう時はペルシャ語で見てみるとより現地の表現に近いものがわかります。
زابل
こう書くので実際はザーボルのようです。
ザボールの方が言いやすいなと思いますが、Layoutはザーボルでいきたいと思います。

ちなみに1920年代ごろまでは「スィスターン」と呼ばれていたそうですよ。

ラグが見たい

そうですよね。ラグ愛を語るのにラグの写真をまだお見せしていませんでした。
さっそくステキなあの子に登場してもらいましょう!

オーラ、ありますよね。
比較的渋めな色づかいがザーボルのあるスィスターンのバルーチのラグの特徴ともいわれますが、渋くて落ち着いているだけじゃないチャーミングさがあると思うのです。
この「チャーミングさ」はとても大事だといつも感じていて、Layoutのラグを選ぶときはときめきがあるかとチャーミングかどうかは重要なポイントです!
私の身近なチャーミング代表は小松店長なのですがラグも人もチャーミングさに惹かれてしまうみたいです。

このラグが持つチャーミングさはどこからくるのか、考えてみました。

完璧じゃなくてもいい

このラグのメインのデザインはギュルですが、ギュルの形はトルクメンのテケというグループのものにみえます。

トルクメン テケ
ザーボル バルーチ

このザーボルの北側のエリアはかつてトルクメン族の支配下にあったと言われていて、18世紀はじめから19世紀の終わりまでテケの襲撃にあった背景が影響しているようです。
部族間の襲撃というのは文字で読んでも簡単には想像がつかないですが、たった300年前に起こっていたことなんですよね。
トルクメンの中でもテケという人たちは好戦的だったとよく聞くので納得です。
トルクメンのテケのギュルと比べてみると、配色とトリの足のようなデザインは再現されているようです。
全体のフォルムはふっくらまるいテケとは違い四角いですね。

本家と比べるとザーボルのギュルはやっぱりチャーミングです!
テケのギュルは整っていて突っ込みどころがないくらい美しくて大好きですが、この角ばったザーボルのバルーチのギュルを見てください。
プロの画家の書いた絵とこどもの書いた絵の違いというか、そういう良さがあると思うんです。

ウール三重奏

構造もみていきましょう!
経糸、緯糸、パイル糸3つともすべてウールでうれしい三重奏!
まずは経糸から。

経糸はオフホワイト(黄色く見えるのは染めている?もしくはパイルの色糸で染まってしまった?)のウールで左側の一部だけダークブラウンのウールが一緒に撚られてる糸が使われています。すべて同じ糸にしなければいけないルールなんてないのです。だってそこにこの糸があったんだもの。
そういう本能的なところも大好きです。

緯糸はスモーキーなグレーの同じ太さのウールで2本。
緯糸は表からは見えない裏方さんですが緯糸の色でラグ全体の色の雰囲気は変わってくると思っています。
このラグの「渋さ」の部分はこの緯糸のグレーが一役買っているかもしれませんね!

パイルはペルシャ結びの左開き。
経糸2本にパイルになる糸を絡めていきますが正面から見た時に左右が非対称で毛先が左側に流れるバルーチでは良く使われる結びです。
経糸が前後に重ならずタフバフトというしなやかな構造でこのくたっと感もたまりません。

魅惑のシマシマ

他にもチャーミングなポイントを探してみましょう!
このラグを織っている過程の後半できれいなシマシマを見つけました。

フィールドの赤の部分にかわいいアブラッシュが見えます。
淡い赤のアブラッシュを見ると私はいつも霜降りの和牛を思い出して、おいしいお肉を食べたい衝動にかられます。
いい霜降り具合です!

ザーボルらしさ

ボーダーのデザインはザーボルのラグでよく使われる四方に伸びるクロスのモチーフ。
キャラメルマキアートのようなカラーがいいですよね。
アイスじゃなくてホットのキャラメルマキアート。暖かい飲み物がおいしい季節になってきました。
バルーチの中でもザーボル周辺のものはブラウンの使い方がいつも上手で、そんなところも私がこのエリアのラグが好きな理由の一つなのだと思います。

じっくりこの子を見てみて、あ~やっぱり好き!と思えたザーボルのバルーチのラグ。
ザーボル周辺まではまだ行ったことがないので、この子たちがどんな場所で作られたのかを自分の目で必ず確かめたいと思います!

(Text :Hirai)

No.90159

トライバルラグ
バルーチ

SIZE : 154×86cm

Price(tax in): 80,300