このラグについて、私は思うところがあるのです。
イラン南部に住む人の作るラグが最近わたしの中でブームなのですが、それにしてもこのラグいろいろと妄想を掻き立てられます。
もしこのラグを織った人に会うことができたら聞きたいこと。
「途中で織る人交代してませんか?」
この疑問にたどり着くまで、織り進める織り子さんの気持ちを想像しながら順に見ていきましょう!
全体でこのラグを見てみると四隅と真ん中に、少し大き目なひし形が5つ見えます。
最初(ラグを織り始めた下の方の部分)はとてもいい感じ。左右で配色も変えていておしゃれですね!
間に狼か何かのモチーフも忘れずに入れて、バランスもばっちり。
少し上に織り進めて、遊び心も忘れずに。
何種類かボールのようなデザインが続きますがここで第一の難所が訪れます。
「フィールド(ベースの部分)で使ってた糸、なくなったー!」
結構な範囲で使う予定だったこの淡い赤の糸がかなり早い段階でなくなりましたね。
でもこちらは想定内。よくあることですから、近い糸の赤い糸で代用しましょう。
これで続きをやろうか!と決めた糸は何段か織ってみると思いのほか色が濃くて、このままじゃまずい。もっと淡い赤もってきてー!という感じでしょうか。
一度濃い色に行きかけましたが淡い色に戻りました。
半分くらいはこの色で持ちそうだね。ということで、進めていきます。
問題はここからです。
「そろそろ真ん中に1つひし形入れておかないとね」となったタイミングでおそらく、、、
「誰かちょっと代わってくれない?」となったと思うんです。
疑惑1 中央のひし形から様子がおかしい。
あんなにきれいな下の2つのひし形とは明らかに違うフォルム。
ひし形の周りのギザギザの隙間はベースの赤だったはずなのに、オレンジにしちゃおう!というマイペースぶり。マイペースという点では少し親近感が。
全体的にごちゃごちゃっとし始めました。真ん中だけが乱れていたのなら話は別ですが、最後の2つのひし形までこのフォルムを貫きます。
やっぱりさっき誰かと交代しましたよね?
疑惑2 自分のお気に入りモチーフをアドリブで入れ始める
ひし形だけならちょっと失敗しちゃったのかな、と思えなくもないのですが気になるところがもう一つ。
外側のボーダーに多く使われている、実のなる木のようなデザインがここでフィールドに登場しちゃいます。
交代した人はきっと好きだったんです、このモチーフが。
さっきまで全然入ってくる気配がなかったですからやはり怪しいと思うんです。
結果
2つの疑惑が上がったところで、「途中で織る人交代してない?」の疑問にたどり着きました。
せっかくですので、最後のゴールまでもう少しお付き合いください!
怒涛のレインボーゾーン 怒涛の赤の糸、変更ゾーンです。
最後にここぞとばかりに色を替えてきます。
虹の様にもみえてきて、ステキじゃないですか!
虹のあとは割と何事もなかったかのように統一されたボーダーでのゴールです。
「ボーダーはちゃんとルールに沿ってよ」という前任の織り子さんからの引継ぎでもあったのでしょうか?
こんなわけで1枚の中で目まぐるしい展開を見せたシラーズのラグですが、私がお伝えしたかったのは要するにこのラグがとっても楽しくて魅力的だということです!!
ラグの楽しみ方はそれぞれですが、わたしはこんな風に織り進めるときにどんなことが起こったのか!?というのを妄想するのが大好きです。
オールド感が強めなこの子はダメージも少しありますが、お部屋に敷いたらとびきりのかっこよさを見せてくれるはずです。
しかしかっこいい反面、お茶目な(私の想像ですが!)一面もあったらもっと魅力的だと私は思っています。
そういう子ほど目が離せないんですよね。。
(Text : Hirai)
No.73795
トライバル シラーズ
SIZE:206×115cm
Price:120,000+Tax
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