旅の終わりに

今回のLayoutの旅は、バイヤーの平井がひとり先乗りして各地を巡り、ラグとラグに関わる大先輩たちに出逢う「新しい旅のカタチ」

合流までの2週間と少しの間に約3000キロを移動。初めて訪れる街やいつもの仲間たちとの再会を経て、平井のペルシャ語とラグの知識は格段に進歩していました。

元々ラグへの想いは誰よりも強く、底なしの探求心を持つ平井。現地での滞在を経て、たくさんの大先輩たちのコトバが裏付けとなり、平井の中にある疑問が解決され、整理されていたのだと思います。

「みんなのおかげで私はここに来ることが出来たので、たくさんのことを持ち帰らなくてはいけない」と休むことなく各地の絨毯屋さんを巡り、ラグを選び、大先輩たちに話を聞くという毎日。

送られてくるレポートを読みながら、「平井らしいな」と思いつつも、走りすぎのような気がして心配な思いが募りました。

Layoutのこだわり

Layoutは現地に自前の倉庫兼メンテナンス工房を持っています。
それはお客さまが確かめることの出来ない部分、“ラグを手にする前の安心”をしっかりとサポートしたいから。

今回の旅のもうひとつの目的は、工房で働いてくれている職人さんたちにLayoutのこだわりと品質チェックの方法を伝えることでした。

ここを仕切ってくれているのは5年以上の付き合いのあるアリさん。

当初は通訳兼ガイドとしてLayoutをサポートしてくれていましたが、すっかりラグにハマってしまい、今では専属のマネージャーとして活躍してくれています。

Layoutのこだわりは、現地の職人さんたちからすると「なんでそこまでやるの…?」と理解できないはずなのだけれど、平井の想いと、職人さんたちをリスペクトする気持ちが伝わったのか真剣に耳を傾けてくれたそうです。

その姿を見て、「私たちのラグはこんなにもたくさんの人に支えられているんだ」と改めて実感…。感極まって涙が溢れ、周りの職人さんたちを戸惑わせてしまった平井でした。

ラグは「織る」ことに注目されがちですが、 実は「糸を紡ぐ、織る、直す、仕上げる、洗う…」という沢山の工程を経てLayoutに届いています。

Layoutの職人さんたちは、アリさんが集めてくれた技術や想いをもった素敵な人ばかり。

「だからこそ、大切にラグを紹介しなければいけないんです!」と平井は力を込めて言っていました。(Layoutで働いてくれている職人さんたちは近々ご紹介しますね。)

平井が大ベテランの職人さんに掛けた言葉があります。

「クリーニングが終わったラグに座ったらお客さんに失礼だよ」

「ラグを足で扱わないで、悲しくなるから」

現地では当たり前の行動も、平井の“ラグを大切に扱う”という信念の前では意味を持ちません(笑)

これは、「ラグを大切にしないということは、お客さまも、お取引さまも大切にしていないこと」というLayoutの想いからくる、ちょっと生意気な発言かもしれません。

ですが、ラグと真摯に向き合う平井の姿勢を見ているからこそ、大先輩たちに受け容れてもらえるのだと思います。

天職と覚悟

僕が合流した時に「平井さんは勤勉だね、ずっとラグとペルシャ語の勉強している。車での移動中もね」とアリさんから伝えられました。

確かに今も車のなかでレポートを書いている平井。
そうだった、アリさんがラグにハマったのも「この仕事は私の天職なんです」と言い切る平井の覚悟、強い意志に惹かれたからだよね。

各地の絨毯屋さんと対等に会話できるほどの深いラグの知識と強い探求心からくる質問攻めは、「この子はナニ者?」とお店の人たちを驚かせ、その強いラグ愛にベテランのおじさんたちから尊敬すら集めてしまう平井。

一緒に旅するなかで、どこを訪れても真っすぐにラグへの想いを自分のコトバで伝えようとする姿を見て、もし僕がLayoutの関係者じゃなかったとしても、ただシンプルにひとりの人間として、「平井の選んだラグを手に入れられたら幸せなんじゃないかな」なんて勝手に感動してしまいました。

「絨毯のことをすべて知るには自分の人生じゃとても足りない」は、平井らしい言葉です。

人と出逢い、ラグと出逢う

目を合わせることなく、言葉を交わすことなく、手の温もりを感じることなく完結してしまう時代に、Layoutが敢えて「旅」を選ぶのは、現地に赴き、たくさんの人に出逢い、言葉を交わし、彼らが集めた愛すべきラグたちを譲り受けるため。

たくさんの “本当” を集めてLayoutを信じてくれる方に届けるため。

キーボードを叩けばキレイな言葉は作れるけれど、不器用でもいいから、現地で集めた “正直で心のある言葉”を紡いでいきたいという想いがあるからなのです。

いつまでも人とラグとの運命的な出逢いの旅をLayoutは続けていきます。

旅の終わりに

今回の旅で新しい街を訪れた際、街を仕切る有力者からの夕食の誘いを断ったら、「この街に来て俺と食事しないのはあり得ない」と、翌日に七千坪もある彼の豪邸に半ば強制的にランチに招かれるという、時間のない僕らには有難迷惑なサプライズもあったけど、いつもの仲間たちのLayoutを想う気持ちや、平井を1カ月もの間サポートしてくれたアリさんの優しさに触れたあったかい旅でした。

なぜ、この地の人はこんなにも温かくお節介なのだろうか…
愉しすぎてまた訪れなければ…という気持ちにさせられてしまいます。

夢の途中

飛行機での移動中、隣に座る平井から「ずっと取ってあるメールがあるんです」と見せられたのは、7年前のまだ入社していない平井とのやり取りのメールでした。

グッと胸に来る懐かしい思いとともに、面接の時に「ウチに入ったら何ができますか?」という質問に、「私は何ができるのでしょう?」と答えてくれたのを思い出しました。

7年後、Layoutの立ち上げから「絨毯が好き」という平井の想いはブレるどころか益々強くなり、今では仲間を引っ張ってくれるかけがえのない存在になってくれました。

平井が入社して間もない頃から口にする僕の夢は「ラグの業界を変える」、「平井を情熱大陸に出す」こと。平井の夢は「ラグをもっと知り、国内のメンテナンスも自社でサービスできるようにする」こと。

だから、まだまだ夢の途中。

愛すべきLayoutの仲間たちと少しずつ前に進んでいきます。