『オールドギャッベに想う』

お久しぶりです。平井です!
Rug is goodを書くのは少し久しぶりな気がします。

去年7月に買付けたラグたちがまだじわじわと入荷している状況なのですが、先日かわいいオールドギャッベがやっと日本へ届きました。

そのギャッベはシラーズから140km程西へ進んだ、カーゼルンの近くの小さな町にある絨毯屋さんで見つけたかわいい子。
倉庫にあるラグを全部外に持って行って、広い空の下一面に並べてお日様の下でラグをセレクトした光景は今もはっきりと目に焼き付いていています。

写真にしっかりとこの子が映っていました!

Layoutでは新しいタイプのギャッベを多く扱っていますが、このオールドギャッベはそんな現代のギャッベたちの先輩であり、ギャッベのルーツを思い出させてくれます。

そもそもギャッベとは何だろう?

ギャッベという絨毯はおそらく遊牧民の歴史の中でもかなり初期の段階から作られていたと考えられていて、3000年ほど前に羊の毛皮の構造に似せたパイル構造(毛足がある)の織物を生み出したそのころまでルーツを遡ることができます。

(フェイクファーやヴィーガンレザーなどができるずっと前から遊牧民は動物を生かしたまま、その温かい毛皮のようなものを手に入れるにはどうしたらいいかをすでに考えていたということに感動します!)

このオールドギャッベに見られるように、結び目は粗く毛足は長めでざっくりとした織りが特徴。

直接地面に敷かれたり寝床に敷くものとして作られ、さらに毛布のようにも昔は使われていたそうです。絨毯は結びの糸が多くなるほど重たくなります。

初期のギャッベは厚みはもちろん、軽さというのも大切な要素だったように思います。遊牧するには馬やらくだやロバの背中にのせて荷物を運ぶ必要があったので、荷物を入れる木箱の代わりに毛織物で袋を作ったように、ギャッベだって軽い方が動物たちの負担が減りますね。

このオールドギャッベを見ると、1つの結びがとっても大きくて糸が太いことがよくわかります。
絨毯屋さんみたいなことをいいたくないのですが、一応ノット数というものを測ると4万ノットとなりそうです。目が細かくなくたって、こんなにもかわいい。

「いい」と思うのもはその人それぞれで、それが彼らの生活の理にかなっているということを知るとますます面白いなぁと思います。

そんなオールドギャッベに想いを馳せながら、ここ最近何度かベニワレンについてお話をすることがあったのもあり、オールドギャッベとベニワレンについてお話したいと思います。

ベニワレンのこと

熱狂的なベニワレンブームから少しだけ熱が冷めてきたように思いますが、まだまだ人気があるベニワレン。
オールドギャッベのことを考えていたら、北アフリカのアトラス山脈に住むベルベルの人たちのことが頭をよぎりました。

場所は違っても同じ山岳地帯を行き来した遊牧民たちの生活の道具。
ベニワレンは床に敷いて寝具のように、また羽織ったりするのにも使われていたといわれていますが、そうなるとオールドギャッベととても似た用途で使われていたことがわかります。

冬は雪が降り、極寒のアトラス山脈の中でモフモフのあたたかいものを身に着けたいと思うのは、その環境で暮らしていたらきっとそう思いますよね。

ギャッベは毛布にとどまりましたが、ベニワレンは羽織るわけですからより軽さが重要だったのではないでしょうか?
そうなるとベニワレンに使われる糸の太さと記憶が確かならば、結びの糸と糸の間に入れる緯糸の本数や間隔が広くゆったりと取られていることも納得ができます。

そして、モロッコはどうやら土足で暮らす文化であるそうなのです。
古いベルベルの人の暮らしぶりがわかる写真などが見つからず、本当に確かなのかはわかりませんが調べてみるとベニワレンは土足で使われると出てきます。
もしかしたらお部屋の中で使うことを想定していない毛織物なのかもしれません。

そんなベニワレンの本来の姿をふまえ、ベニワレンをお使いのお客様からよくご相談を受ける「遊び毛」について考えてみます。

ベニワレンとギャッベはウールで作られ、構造自体もほとんど同じと思っていいと思うのです。

それぞれ作られる場所が違うので、使われる羊毛の羊の種類の違いが影響している可能性もありますが、その違いで一番気になるのはウールの糸の太さと撚りです。

ベニワレンに使われるウールの糸は太くて、糸にするときにあまり撚りをかけていないように見えます。
それゆえ、ふわっとやわらかい肌触りになるのですが、その分繊維が引っ張られたりすると抜けやすくなります。ウールは短い繊維の集まりなので撚りをかけないと押し固めたりしない限り、バラバラになってしまいます。
それが遊び毛となり、お部屋の隅にふわっと毛が出てくる原因なのではないかと思います。

ただこの撚りをかけていないというのも、より軽さを出すための先人の知恵ともいえるのではないかと考えています。
糸は同じ太さ、同じ長さで糸を作ろうとするとき、撚りを強くかけて作った糸の方が重たくなるので、ふわっとさせているのにも彼らなりの理由があったんじゃないかと考えることもできます。

本来どのような環境でどう使われていたのかを知り、その困った一面さえ面白いなぁと感じて暮らしに取り入れられたら、より一層愛着が増すかもしれないですね!

こんなことを考えさえてくれたこのオールドギャッベに感謝をしつつ、最後に少しだけオススメポイントを!(笑)

最後にちょっとだけギャッベの紹介です。

このオールドギャッベの中で私が好きなところを一つだけ選ぶとしたら、左下のカニのようなモチーフです。

その横にある「ひし形のブラックホールに吸い込まれる人」も気になりますが、どうみてもカニに見えてしまうこのモチーフはギャッベの織りはじめてまもないところに織り込まれていて、このラグの織り手が一体どんなギャッベにしようと考えていたのか、この先の展開を存分に期待させてくれるところから始まります。

このゆるさと自由なところがたまりませんね。
力が抜けてリラックスできそうです~

ゆる可愛いオールドギャッベとベニワレンについてのお話でした。

(Text :Hirai)

No.93505

オールド ギャッベ

SIZE : 212×128cm

Price : 181,500